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2015年2月20日 5つのデジタルヘルススタートアップをDeNA春田会長らが批評

5つのデジタルヘルススタートアップをDeNA春田会長らが批評

 2015年2月7日に日本大学病院(東京・御茶ノ水)で開催された「医療×ITカンファレンス」。第一部の米Acucela社 ファウンダー、会長兼CEOの窪田良氏による講演(関連記事)に続き、第二部ではディー・エヌ・エー(DeNA) 取締役会長の春田真氏とAcucela社の窪田氏が、会場の質問に答えながらトークに臨んだ。

 そして第三部は、5つのデジタルヘルススタートアップが登壇し、約10分程度のライトニングトークを行なった。春田氏と窪田氏が審査員となり、それぞれのプレゼンテーションを批評した。以降では、第二部と第三部の様子を順にレポートしていく。
 まず第二部のセッションは、窪田氏が医療分野代表、春田氏がIT分野代表での登壇という位置付けだ。伸び盛りのバイオ製薬ベンチャーであるAcucela社に対し、DeNAは2014年に遺伝子解析サービスに参入(関連記事)、さらに2015年3月に住友商事との合弁会社「DeSCヘルスケア(ディーエスシーヘルスケア)」を設立すると発表したばかり(関連記事)。

 会場からは早速、DeNAの春田氏に対し、「ヘルスケア関連の人材と接するときに感じるハードルはあるか?」との質問が飛んだ。
粘り強い議論からアイデアが出てくる

 この質問に対し、春田氏は次のように答えた。「基本的に我々がやることは、ユーザー目線で『こうやったらいい』『こういう形のものがあったらいい』という気付きを与えること。遺伝子解析サービスもそうだが、最初は一緒にやっている東京大学医科学研究所の方々に『ゲーム会社に何ができる』と言われた。しかし、それは想定内。専門家に対して、『とはいえ、こんなことができるのではないか?』といった形で粘り強く議論するところからアイデアが出てきて、全く違う形のモノが現れるようになった」。

 窪田氏が研究者、臨床医、経営者といった多彩なキャリアを歩んできた(関連記事)のと同様、春田氏も大手銀行から創業間もないDeNAに飛び込んだという経歴を持つ。その大胆なキャリアチェンジについて興味を持つ聴衆が多かったようで、二人に対しては「人生のターニングポイントについて考えていることは?」といった質問も寄せられた。

 「車のギアチェンジと同じで、そのときは非常に不安定になる。しかし結局のところ『死ぬことはない』と考えている。多少回り道をしたとしても、またそこから戻ってこられると思いながらチャレンジをしてきている」(窪田氏)。

 「(2015年)6月にDeNAを去る予定で、日本でまた新しいことを始めたいと考えている。私の場合は転機というより、もともと好奇心が強いこともあり“新しいことをしたい”という思いがある。だが、その時点で携わっている仕事、与えられた責任とのバランスを考えながら、外に飛び出すかどうかを判断していく」(春田氏)。

 質問に答える中で、2人のキャラクターの違いも見られた。例えば「一歩を踏み出すための勇気には何が必要か?」との質問には「リスクテイクを徐々に大きくしていって、最悪の結果のときのプランBを考えておく」(窪田氏)、「突き詰めて言えばお金の問題。その問題をどのように処理するかが大事」(春田氏)といった具合である。窪田氏は冒険者でありながらも理詰めで考えるタイプ、春田氏はその話しぶりも含め、泰然自若といった形容がよく似合う。

 一方で、最後の「一緒に働きたい人は?」という質問に対しては「信頼できる人」(窪田氏)、「真面目に仕事に取り組む人」(春田氏)と回答。異なるフィールドで活躍するリーダーであっても、求める人物像は同じなのだと感じさせる瞬間でもあった。
「Applicare 2014」準優勝のオストメイトナビ

 続く第三部では、春田氏と窪田氏を審査員となり、5つのデジタルヘルススタートアップがライトニングトークを行なった。
 最初の発表は、オストメイト(人工肛門保有者、人工膀胱保有者)のための生活支援アプリ「オストメイトナビ」。慶應義塾大学の大学院生が手掛けるプロジェクトで、2014年に開催された医療系アプリコンテスト「Applicare 2014」で準優勝を獲得したアプリでもある(関連記事)。

 外出時に排泄、排尿に不安を抱える人工肛門・人工膀胱患者のために、対応トイレの位置情報やストーマ(排泄口)外来病院の情報、さらには対応トイレの情報交換機能などをアプリに盛り込んだ。既に、患者会の全面協力も取り付けたという。

 オストメイトの社会的認知度を高めるツールとしての役割も担う。2015年3月にiOS版アプリのリリースを予定している。
 窪田氏は「情報がほしい人には役立つだろう」と評価。春田氏は「社会に広めようという意義は素晴らしい。ただし、リリース後の資金回収まで見据えるビジョンがほしかった」と、ビジネス的な視点でアドバイスした。
「Applicare 2013」優勝アプリの発表も

 続く発表は、アプリと薬剤ケースによる服薬忘れ防止システム「flixy」。こちらは「Applicare 2013」で優勝した実績を持つ。アプリ開発者、研修医、ハードウエアエンジニアの3人から成るチームだ。
 ある調査によれば73%もの人が薬を飲み忘れ、そのうち約半数が「うっかり」によるものなのだという。flixyは薬剤ケースに小型のBluetoothモジュールを仕込み、アプリと連動させてスマートフォンに服薬タイミングを知らせる。ケースのプロトタイプは3Dプリンターで何度も改良を重ねた。

 服薬の自動ログ機能、飲むまで警告するアラート機能、遊びの要素を加えたゲーミフィケーション機能が特徴で、テストユーザーからは良い反応も返ってきているという。現在iOS版のアプリをApp Storeに申請中(2015年2月13日時点)。ケースはこれから本格販売を目指し、Webサイトでのプレオーダーで月間100個、初年度で1000個の販売を見込む。

 主なターゲットは生活習慣病を抱える壮年層とのことだが、窪田氏は「高齢者のニーズのほうが大きいのでは」と指摘。運営側としてはその認識はもちろんあるものの、高齢者層はスマートフォン操作に馴染みが薄いため、現段階ではターゲット年齢を絞ったと説明した。
“STAP捏造疑惑時”にも話題となった画像不正検出ソフト

 次に登壇したのは、医療分野の研究者向けサービスを手掛ける東大発のベンチャー「LPixel」。近年の大きな問題として研究の画像データ(非構造化データ)の爆発的な増加と複雑化があり、それら「研究の画像ビッグデータ」解析を支援する専門的サービスを目指す。
 具体的には、画像の処理に忙殺され「研究者が作業者化している」現状に着目。そうしたネガティブ要素を排除しようとサービスの開発に取り組んでいる。ライフサイエンスの研究開発力と最先端の画像解析技術との融合が強みで、既に画像不正検出ソフト「LP-exam」の無料版をオンラインで公開済みだ。本ソフトはSTAP細胞論文の捏造疑惑時にも話題となったものである。なお、オフラインの高精度・多機能版「LP-exam PRO」も販売中である。

 設立わずか1年足らずではあるものの、共同研究、受託研究開発の申し出は引きも切らないという。2年目となる2015年はその成果を生かして自社開発に注力していく予定だ。現在取り掛かっている「Project Ai」は、前述の研究者の作業者化を人工知能でカバーするというプロジェクト。これにより、研究者が本来の高次研究に打ち込める環境を整えたいと語った。

 春田氏は画像診断により身近な人の早期がん発見に結びついた体験談を交えながら、「これからも意欲的に進めてほしい」と激励の言葉を贈った。窪田氏は「単純解析の苦労を排除してくれるのは研究者としてはありがたい。このサービスを使わないと発掘できない価値のある情報が具体的に出てくると、さらに弾みがつくだろう」と、研究者ならではの視点で感想を述べた。
「ウンログ」も登壇

 そして、次に登壇したのは「うんちで健康管理するただ一つのアプリ」を標榜する「ウンログ」だ(関連記事)。排便の状態をアプリに入力し、体調管理、生活習慣の改善のほか、健康への自覚などを促す。主に便秘対策やダイエット目的の女性層に人気を誇り、iOS版アプリは既に24万ダウンロードを記録したという。
 排便によりポイントが貯まりAmazonギフトカードやiTunesカードと交換できる仕組みや、「うん活」を共有するSNS機能など楽しく継続利用できる仕掛けが豊富で、今後は排便を元にした健康相談窓口の機能も実装予定。さらに睡眠記録、他社連携による食事記録、赤ちゃんやペット専用の排便記録など、続々と派生アプリの展開も目論んでいる。

 「ニッチだが非常に価値がある」(窪田氏)、「ユニークで面白いサービス」(春田氏)と審査員の評判も上々。アプリ内課金もあるが、マネタイズの面ではこれからが本格勝負とのことで、徐々にヘルスケア企業とのコラボ案件も出てきているとウンログ 代表取締役の田口敬氏は語った。
お茶の水内科の五十嵐院長が登壇

 最後に登場したのは現役医師。お茶の水内科 院長の五十嵐健佑氏である。同氏は、心房細動の不整脈の疑いが分かるというアプリ「ハートリズム」を紹介した。
 iOSアプリであるハートリズムは、iOSデバイスに搭載されているカメラで脈拍をグラフに記録し、脳梗塞の発症リスクを調査できる。五十嵐氏は「心原性脳塞栓症」という脳卒中の最重症型の症状をスライドで示しながら、「その原因のほとんどが心房細動。これを事前に察知すれば予防することができる」と話した。
 アプリは無料で公開中。五十嵐氏の周囲でも50人以上、心房細動の疑いが見つかったとのことで「予防に役立った」としている。ただし、現在はアプリによる診断は禁じられているため、診断結果は自身で判断することになる。

 春田氏は「iPhoneでここまでできることに驚いた。他の病気にも適用して幅が広がればさらに良い」と評価。窪田氏は「医師がいなくてもある程度診断できる手法は、医師が足を運べない遠隔地や医師不足の地域などでニーズがあるはず。心臓は世界共通なので、グローバルに展開できるのも強い」と語った。

 予後が非常に悪い心原性脳塞栓症を何とかしたいとの気持ちから生まれたアプリだけに、ニーズに則した現実性が高く評価された。なお、五十嵐氏は睡眠時無呼吸検出アプリ「イビキー」や、日本初の人命救助支援アプリをうたう「ハートレスキュー」も公開済みである。

引用元:http://techon.nikkeibp.co.jp/article/FEATURE/20150219/404938/?ST=ndh

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